知的財産権講座第57回:著作権
知財検定2級実技試験の問題より知財戦略の実務に近い出題です。
私が実際に仕事で出くわすような話ですね。
最新の知財検定2級実技試験(2015年11月15日実施)より、
著作権に関する問題です。
アパレルメーカーX社の法務部員は,コンテンツAの利用方法に
ついて発言1~3をしている。
発言1
「コンテンツAは、書籍「日本ファッションの歴史」について、
甲が英語に翻訳したものを、さらに乙がフランス語に翻訳した
ものです。
コンテンツAを複製するに乙の許諾を得れば、
甲の許諾を得る必要はありません。」
発言1について、適切と考えられるか?
正解は、×不適切です。
●解説
なぜならば、
甲が英語に翻訳したものを、さらに乙がフランス語に翻訳した
ものは、「二次的著作物」にあたるからです。
二次的著作物とは、基となる他の著作物A(原著作物)
に、「創作的な変更等」を加えて、新たにBとして
創作された著作物のことです(著作権法2条1項11号)。
「創作的な変更等」は、著作物を翻訳することが
含まれます。
二次的著作物は、原著作物とは、独立した
著作物として認められます。
本来は、二次的著作物の創作は、原著作物の
著作者のみに認められるものです。
本問では、他人が創作するには、甲の許諾を
必要とします。
二次的著作物の利用には、甲にも著作権が
認められるからです(著作権法28条)。
●さて、他人の著作物の利用について、その
他人の許諾を得ることを、「権利処理」
と言います。
まず、「権利処理」では、
著作物の著作権者が、誰であるかを調査・確認します。
そして、著作物の著作権者と交渉して
著作権の譲渡やライセンス契約を結ぶます。
「権利処理」は、素人には、法律知識が必要で
難しいことから、著作権の専門家である
行政書士などに依頼することも
考えるべきです。