知的財産権講座第34回:商標権

知財検定2級実技試験の問題より商標権の出題です。

携帯電話機メーカーX社は、新商品であるスマートフォンを開発し、
商品名「QUEEN」をスマートフォンに付して製造し、3カ月前に販売を
開始した。
X社の知的財産部の部員甲は、販売直後に先行商標の調査を
したところ、携帯電話機メーカーY社が、指定商品「携帯電話機」に
ついて商標「QUEEN」とする商標権Mについて、X社の新商品の販売開始
の1年前に登録を受けていたことがわかった。
また、Y社は、商標権Mについては使用していないこともわかった。
甲は、知的財産部の部長Zに対して調査報告をし、さらに発言を
している。

この発言は適切と考えられるか。

発言1 「Y社は、商標権Mを使用していないので、当社の新商品の
製造販売は問題ありません。」

正解は、×

商標権を使用していなくても、商標権の侵害となるためです。

この場合は、X社の新商品はY社の商標権Mを侵害しています。

指定商品「携帯電話機」に商品名「QUEEN」ですから、
まさにY社の商標権Mに権利範囲に入ります。

商標権の権利の範囲は、類似する商標、類似する指定商品に
まで及びますが、
この場合は、商標も指定商品も同じで、そのものズバリという
感じですね。

X社が、Y社の商標「QUEEN」の登録前に商品を製造販売して
いれば、場合によっては先使用権(商標法32条)を主張する
ことができるかもしれません。

先使用が認められれば、Y社の商標権Mを侵害しないことに
なります。

先使用権については、また別の機会に解説します。

しかし、この場合は商標「QUEEN」の登録後にX社は
商品を製造販売しているので、先使用権は認められません。
この場合は「後使用」ですね。

なお商標権は、使用していないと取消審判を請求し取り消す
ことができます。

この場合、甲さんはかなり勘違いをした発言をしています。
商標法の勉強不足でしょう。

なお我が国の商標法は、登録主義を採っています。
商標を使用していることが、商標登録の要件ではありません。

ただし、商標権者が3年間、登録商標を使用していないと、
他人は不使用取消審判(商標法50条)を請求することができます。
この請求が認められれば、その登録商標は取り消されます。

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