知的財産権講座第108回:映画の著作者は誰か
映画の著作者は誰か
著作権法の、これだけは知っておいた方が
よいポイントを紹介しています。
私が、社内で初心者向けの知的財産権
講座の講師をやった際に、
質問が多かった点、誤解されている人が
多かった点を紹介します。
映画の著作者は誰でしょうか
映画製作会社かな。
ふつうは、このように考えるでしょう
私も、自然とそう考えていました。
しかし、
映画の場合、誰が著作者となるのか
それほど、単純ではありません。
場合分けしてみます。
①映画製作会社が、その会社の社員
を使い映画を作成した場合
映画製作会社が、著作者となります。
(職務著作)
②映画制作会社が、社外の監督やその他
スタッフを集め、映画を作成した場合
著作権法では、その映画の「全体的形成に
創作的に寄与した者」のみが著作者に
なります(法16条)。
ふつうは映画監督などが、著作者です。
映画は、カメラマン、美術、監督、スタッフ
など多くの人が制作に関わります。
しかし部分的に寄与した人は、著作者ではありません。
制作関係者全員が、著作者ではありません。
さらに、映画の特有の著作権法の規定が
重要です。
③著作者(映画監督など)とは、別に映画製作会社
が著作権を持つことになるという規定(法29条)
です。
すなわち、この場合、映画著作者と著作権者
が異なるということに注意が必要です。
なお、映画の著作者について争われた以下の判例
があります。
映画の著作者を巡る「宇宙戦艦ヤマト事件」
(東京地裁平成14年3月25日)
この事件は、映画の著作者は、原作を書いた
漫画家松本零士氏か、それとも、制作を担当した
プロデューサー西崎義展氏か争われました。
判決では、映画の完成に至るまでの全過程に関与し、
具体的かつ詳細な指示をして最終決定をしていることから、
プロデューサーが
「著作物の全体的形成に創作的に関与した者」であるとして、
映画「宇宙戦艦ヤマト」の著作者は、プロデューサー
の西崎氏であることを認めました。
この映画の著作者は、著作権の試験問題
でも重要なポイントです。