相続手続きの流れその10(特別受益)

生前に特別に利益を得た人がいる場合

生前に特別に得た財産

 

遺言がある場合や、法定相続で割合が決まっている場合でも
相続の際に、「お兄さんは親から住宅資金をもらったよね!」
「そうは言うけど、私は高校を出てすぐに働いたけど、お前は大学までの学資をだしてもらったしゃないか」という問題が出てくることがあります。
このような特別に利益を得た人がいる場合の相続はどうなるのでしょうか?
結論からいうと、特別に得た利益は相続財産の先取として、相続分に含めます。
亡くなった人から生前にほかの相続人とは別に財産をもらったのですから、すでに相続分をもらったことになるからです。
特別に得た財産上の利益を「特別受益」といいます。
これを得た人を「特別受益者」といいます。
この特別受益は、相続分を計算する際に、相続分の先取りとみなし、各自の相続分に含めます。
これを特別受益の持ち戻しといいます。

遺言がある場合や、法定相続で割合が決まった場合に特別受益の持ち戻しを行います。
話し合いによる協議分割では、特別受益を考慮に入れても入れなくてもよいです。
円満な協議分割の場合には、それはそれで構いません。
また遺言で、「特別受益は免除する」と書いておけば、特別受益を含めなくてよいです。

何が特別受益となるのか?

 

特別受益は、亡くなった人から生前にほかの相続人とは別にもらった財産上の利益です。
これは、物や権利など一切のものが含まれます。
過去にもらったものですから期間の制限はありません。
たとえば生活資金の援助を受けたとか、住宅資金、教育資金などの贈与を受けた場合です。
婚姻・養子縁組のために受けた贈与も特別受益です。
これらは生前贈与として特別受益になります。
また遺言で贈与された財産(遺贈)も特別受益になります。

特別受益を含めて計算する

 

相続分を計算する際には、特別受益があればその分は相続財産に組み入れます。
特別受益を加えたものは、みなし相続財産といいます。
遺産分割をする際には、みなし相続財産をもとにして行います。
たとえば、長男が受けた特別受益分が2000万円を含めたみなし相続財産が2億円だとします。
これを兄弟4人で分けると一人5000万円づつとなります。
長男は、すでに2000万円をもらっていますので、本来もらえる5000万円からすでに得ている利益2000万円を差し引いて3000万円がもらえることになります。
これが特別受益者である長男が実際に取得できる現実相続分です。
このように特別受益者は、特別受益を受けた分を自分の相続分から差し引かれます。
特別受益の制度は、相続人間の公平を実現するための制度です。

 

特別受益のほうが多い場合は?

 

特別受益のほうが多い場合は、これを返す必要があるのでしょうか?
この場合でも、原則として返す必要はありません。
たとえば、長男が受けた特別受益分が1億円を含めたみなし相続財産が2億円だとします。
これを兄弟4人で分けると一人5000万円づつとなります。
長男は、すでに1億円をもらっていますので、5000万円もらいすぎとなります。
このように生前贈与が相続分より多い場合、返さなければならないのかというと原則として返す必要はありません。

関連記事

  1. 遺言書作成の流れ11(遺言書の保管)
  2. 相続は「争族」
  3. 相続手続きの流れその13(限定承認)
  4. 遺言書に、こんなことを書いても無効です
  5. 遺言書作成の流れ12(相続法改正について)
  6. 遺言書はどんな場合に必要なのか?
  7. 相続手続きの流れその6(遺産分割協議)
  8. 自宅の近くの税理士は選ばない

最近の記事

PAGE TOP