知的財産権講座第55回:商標権

知財検定2級実技試験の問題より知財戦略の実務に近い出題です。

私が実際に仕事で出くわすような話ですね。

最新の知財検定2級実技試験(2015年11月15日実施)より、
商標法の問題です。

箸メーカーX社は,ヒノキで作られ,持ち方も矯正できる新商品
の箸を開発し,販売を検討している。
これに関して,X社の知的財産部の部員甲が,新商品の商品名に
係る商標登録出願について発言1~3をしている。

なお,X社は,当該商標登録出願が登録される前に,当該箸に
関する宣伝及び販売はしないものとする。
発言1 「新商品について,その商品の俗称を商品名として,
商標『おてもと』,指定商品『箸』として商標登録出願を
した場合に,当該出願は登録されます。」

X社の知的部の部員甲の発言として,適切と考えられるか。

正解は、×不適切です。

理由は、
商品又は役務の普通名称を表示する商標(商標法第3条第1項第1号)
に該当することを理由に拒絶されるため

●解説

商標の機能の一つとして、他人の商品やサービスと区別する
機能(自他商品等識別機能)があります。

数ある商品等から、自己の商品等と他人の商品等を
区別する機能です。

商標法の目的は、商標に蓄積された「営業上の信用」を
保護することです。

自他商品等識別機能がない商標が保護されると、
需要者の混乱を招く恐れがあります。

そこで、他人の商品やサービスと区別する
機能(自他商品等識別機能)である「識別力」が、商標登録
のための要件となっています。

略称や俗称を含めた商標等の「普通名称」を普通に用いられる
方法で表示する標章のみからなる商標は登録を
受けることはできません(商標法第3条第1項第1号)。

●本問の場合、『おてもと』は、『箸』の俗称ですから、
まさに、商標登録を受けられません。

商標出願をする際には、商標等の「普通名称」かどうか?
確認する必要があります。

確認するには、インターネットや辞書で検索し
確認します。

『おてもと』で、インターネット検索をしてみると、
〔食膳の最も手前にあることからいう〕 料理屋などで,箸(はし)。
俗称であり、「普通名称」です。

商標として登録したいアイデアを思い付いた場合は、
商標出願をする前に、これらの調査が必要です。

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