知的財産権講座第52回:著作権
知財検定2級実技試験の問題より知財戦略の実務に近い出題です。
私が実際に仕事で出くわすような話ですね。
最新の知財検定2級実技試験(2015年7月12日実施)より、
著作権の問題です。
雑誌出版社であるX社が,建築家が設計した建築物Aの
風景写真コンテストを実施することになり,建築物A,周辺の建物
及びそこを行き交う人物の写真を募集した。
優秀作品は誌上で公開することになった。
写真の公開に関するX社の法務部の部員甲の発言として,
適切と考えられるか。
ア 「建築物Aを撮影した写真に,周辺の建物に貼り付けられた
商業ポスターが写り込んでしまった場合,
その商業ポスターの著作権者の許諾が必要とは限りません。」
正解は、○適切です。
この問題の論点は、著作権の利用についてです。
周辺の建物に貼り付けられた商業ポスターが、
他人の著作物である場合には、これを利用する
際には、原則として著作権者の許諾が必要です。
建築物Aを撮影した写真に,周辺の建物に貼り付けられた
商業ポスターが写り込んでしまった著作物の利用は、
著作権者の利益を不当に害するものではありません。
しかし、平成24年著作権法改正以前では、著作権侵害に
問われるおそれがありました。
平成24年著作権法改正(平成25年1月1日施行)で、
写真の撮影等の方法により、著作物を創作するにあたって、
当該著作物(写真等著作物)に係る撮影等の対象とする
事物等から分離することが困難であるため付随して
対象となる事物等に係る他の著作物は、
当該創作に伴って複製又は翻案することは侵害行為に
当たらない(著作権法30条の2第1項)。
と明確にされました。
したがって、商業ポスターが写り込んでしまった
写真の誌上で公開する場合は、著作権者の許諾なし
で利用することができると考えられます。
ただし、著作権者の利益を不当に害する場合には
この限りではありません。
最終的には、司法の判断ということになります。
☆★☆さて余談ですが、そもそもこの問題のような場合に、
著作権者の許諾が必要かどうか?
という問題意識を持つ一般の人は少ないと
思います。
それほど著作権のことを知っている意識している
人は少ないと思います。
インターネットが普及する前は、著作権というと
小説、絵画、音楽、映画などに関わる一部の
人が気にするものという感があったように
思います。
しかし、「映画・アニメ、ゲーム」やコンピュータプログラム
、インターネットの普及で著作権の問題が、以前より
身近なものとなってきています。
著作権法の知識は、重要であり、社会人の常識として著作権
を学ぶことが求められると思います。