知的財産権講座第7回:特許要件

2013年11月24日実施の第16回より2級実技試験

第1問

日本の精密機器メーカーX社の米国支社の商品開発部に所属する甲は、
a手段とb手段とc手段を有する新規な複写機Aを開発し、
平成24年10月1日に米国で特許出願Pをした。

その後、日本でも特許権を取得すべく、特許出願Pに基づいてパリ条約
による優先権を主張して平成25年9月30日に複写機Aについて特許出願Q
(特許請求の範囲には、a手段とb手段とc手段を有する複写機が記載されている)
をしたところ、次のような出願又は文献が存在することが判明した。

2 平成24年11月10日に日本で特許出願され、平成25年10月30日に出願公開
された特許出願R(特許請求の範囲には、a手段とb手段とc手段を有する
複写機が記載されている)

3 平成25年2月10日にX社が米国内において、配布したカタログU
(カタログUには、a手段とb手段とc手段を有する複写機が記載されている)

問5

特許出願Qについて、カタログUを引用して拒絶されるか。

問6

問1において、拒絶されない又は拒絶されると判断した理由
を記入しなさい。

正解

問5は、拒絶されません。

問6は、カタログUの引用により新規性がないとの拒絶理由
には当たりません。

特許出願Qは、平成24年10月1日に米国での特許出願Pに基づく
パリ条約による優先権を主張しています。

パリ条約による優先権とは、先の国(この場合は米国)での特許出願から、
1年以内に他の国(この場合は日本)に特許出願をすると、他の国において、
新規性などの特許要件の判断時が、先の国の特許出願日において
判断されることになるというものです。

この問題の場合は、特許出願Qは、平成24年10月1日に米国での特許出願P
に基づくパリ条約による優先権を主張して日本で特許出願しています。

したがって、特許出願Qが新規性があるかの判断は、平成24年10月1日出願
で判断されます。

カタログUは、平成25年2月10日に、米国内で公表されています。

特許出願Qが新規性があることになります。

カタログUにより新規性がないとの拒絶理由には当たりません。

パリ条約による優先権主張により、先の国の特許出願日により
新規性が判断されることになる。
ということがポイントです。

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