知的財産権講座第44回:商標権

知財検定2級実技試験の問題より知財戦略の実務に近い出題です。

私が実際に仕事で出くわすような話ですね。

あなたは商標登録を受けたら、その商標を使用いていないと
商標登録を取り消されるかもしれませんよ!
という話です。

商標は、使用してこそ保護する価値があり、我が国
の産業発展に貢献するというわけです。

使用していない登録商標は、保護の価値がない
ということです。

では、これに関連した問題を紹介しましょう。

甲は、洋菓子店を営んでおり、自分で
創作した洋菓子に「レ・タフェ・ボンジュール」
という名前を付けて販売していた。
ある日、X社から「レ・タフェ・ボンジュール」
はX社の登録商標であるため、商標の使用を
差し止める旨の警告を受けた。

甲が調査したところ、商標「レ・タフェ・ボンジュール」
は指定商品「洋菓子」のみについて確かにX社の
登録商標として登録されていたが、商標登録後
3年以上、X社は商標「レ・タフェ・ボンジュール」
を「洋菓子」に使用していないことが判明した。

次の記述は適切でしょうか?

ウ X社は、商標「レ・タフェ・ボンジュール」でなく
商標「レ・タフェ」を「洋菓子」に使用していた。
ボンジュールは、フランス語で「こんにちは」を
表す挨拶であるため、「レ・タフェ」が識別力を
有しているとX社は主張している。
この場合、甲は不使用取消審判によりX社の商標登録を
取り消すことができない。

正解は、正しい×です。

登録商標は、実際に使用していない場合には、不使用取消審判
により取り消される場合があります。

商標は、使用してこそ保護する財産価値があり、我が国
の産業発展に貢献するというわけです。

使用していない登録商標は、保護の価値がないからです。

不使用取消審判は、継続して3年以上日本国内で
商標権者等が、指定商品についての登録商標を使用していない
ときは、誰でもその指定商品に関する登録商標を取り消す
ことについての審判を請求できます。

ここで注意すべきは、X社の主張は、何だかわかりにくものです。
これを「翻訳」というか解説してます。

X社は、商標「レ・タフェ・ボンジュール」でなく
商標「レ・タフェ」を「洋菓子」に使用していました。

登録商標とX社が実際に使用している商標は、異なります。
しかし、商標「レ・タフェ・ボンジュール」のうち
商標としての識別力を持つのは、「レ・タフェ」の
部分であり、
商標「レ・タフェ」の使用は、商標「レ・タフェ・ボンジュール」
の使用の範囲に含まれる。

したがって、X社は、正しく商標「レ・タフェ・ボンジュール」
をしているので、甲は不使用取消審判によりX社の商標登録を
取り消すことができない。
と主張しています。

しかし、あくまで「その登録商標」を使用していないと
不使用取消審判により取り消されてしまいます。

これは、X社の苦しい詭弁とも思える主張です。
認められません。

したがって、本問題の記述の、
X社から通常実施権の許諾を受けたY社が商標
「レ・タフェ・ボンジュール」を「洋菓子」に
継続して今まで使用していないわけですから、

甲は不使用取消審判によりX社の商標登録を
取り消すことができることになります。

今回は、登録商標の不使用取消審判の要件の一つの
「指定商品についての登録商標を使用」についてでした。

登録商標は、しっかり登録後に使用・管理をすることが
重要です。

そうしないと、せっかく登録商標を取得しても取り消される
場合もあります。
注意が必要です。

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