知的資産経営その12

先使用権を確保しておく

技術をノウハウとして保護していた場合は、他社が特許取得する可能性があります。
この場合、自社でその技術を使用できなくなります。

もし、自社でその技術を使用できなくなれば、製品や製造設備の差し止めによる廃棄をしなければならないこともあります。
特許出願があることを知らないで、その技術を使用していた善意の事業者(先使用者)に酷なことです。
また、産業政策上好ましくありません。

 

先使用権

特許出願があることを知らないで、その技術を使用していた善意の事業者(先使用者)は、一定の条件のもとで、そのままの技術を使用することが認められます。
これが、「先使用権」です。
「先使用権」は当然のものとして与えらる権利ではありません。
そこで、このような場合に備えてその技術を他社の特許出願前から実施あるいは実施の準備をしていたことを証明できる証拠を検討しておく(先使用権の確保)必要があります。

 

公証制度の利用

技術をノウハウとして保護していた場合、先使用権をどのように確保しておけばよいのでしょうか。

先使用権の主張が可能なように、その技術の存在を証明する手段として、公証人役場を利用することがあります。
ノウハウの技術について公証制度を利用して確定日付を取得して先使用権を確保します。

ノウハウの技術について、他社の特許出願前に実施していたあるいは実施の準備をしていた証拠書類を準備します。
他社の特許出願の内容を知らずに発明したことの証拠を準備します。

これらの書類を定期的にまとめて封筒等に入れ、公証役場で確定日付をもらい所定の期間保管します。
これは事実実験公正証書と言われています。
事実実験公正証書は、20年間公証人役場に保存されるため、改ざんされることがありません
最も証拠能力が高いものといわれています。

公証役場でのは、公証制度の利用については、行政書士など専門家に相談してみることがよいでしょう。

先使用権制度の活用の詳細は、以下をご参照ください。

先使用権制度の活用と実践(特許庁)

 

中小企業が、ノウハウとして技術を保護するためには、発明の過程を記録しておく(ラボノート)の活用も必要です。
また、実験設備や生産設備を内製化し、設備の発注先とは秘密保持契約を結びことも必要です。

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