知的財産権講座第49回:商標権
知財検定2級実技試験の問題より知財戦略の実務に近い出題です。
私が実際に仕事で出くわすような話ですね。
最新の知財検定2級実技試験(2015年7月12日実施)より、
商標法の問題です。
ウイスキー,ブランデーを製造販売するX社は,著名ブランド
である登録商標「Lion」, 指定商品「ウイスキー,ぶどう酒」
に係る商標権Aを有している。
ぶどう酒を製造販売するY社は,X社に対して商標権Aの
一部譲渡を申し入れた。
X社はY社への商標権Aに係る指定商品「ぶどう酒」の移転を
承諾し,移転登録の手続の完了を経て,Y社は登録商標「Lion」,
指定商品「ぶどう酒」に係る商標権Bを有することとなった。
これに関して,X社の知的財産 部の部員甲が発言1~3を
している。
なお,登録商標「Lion」は,標準文字で記載され,
また,「ウイスキー」,「ブランデー」,「ぶどう酒」は
相互に類似する商品である。
発言1について,適切と考えられるか?
その理由は?
発言1
「Y社への権利移転時の契約で何ら規定していない場合,
わが社が登録商標『Lion』 をぶどう酒に付して販売すると,
商標権Bに基づいて当該ぶどう酒の販売が差し止められる
ことがあります。」
●正解は、○ 適切です。
●理由は、
X社の使用行為は,商標権Bの専用権の範囲内での使用であり,
商標権Bを侵害するため
実は、出題では、理由については、選択肢の中から
選ぶ形式になっています。
●まず、この問題では、
商標権の効力がどこまでか?
ということが、正解を導くポイントになります。
商標権の効力は、「専用権」と「禁止権」があります。
「専用権」は、登録商標を独占して使用できるという
ものです。
「専用権」は、独占的効力であり、第三者は商標権の
許諾なく登録商標を使用すると商標権の
侵害となります。
「禁止権」は、登録商標に類似した範囲の第三者の
使用行為を侵害とみなすものです。
登録商標と間違えてしまう範囲も、
商標の誤認を防ぎ、市場の混乱を防止しよう
という趣旨からです。
商標法は、商標に化体した業務上の信用を
保護することが目的だからです。
●この問題では、
X社は、Y社に自分が所有する商標権Aのうち一部を
譲渡しています。
そこで、
Y社は、Y社が所有する商標権Aのうち一部、
である商標権Bに基づく専用権を持ちます。
Y社の商標権Bの専用権の範囲に、X社の登録商標『Lion』
をぶどう酒に付して販売する行為は含まれます。
したがって、X社の使用行為は,商標権Bの専用権の範囲内
での使用であり、商標権Bを侵害することになります。
●この問題では、
X社は、指定商品「ぶどう酒」についての、商標権を
Y社に譲渡しています。
「ぶどう酒」については、登録商標『Lion』を使用して
事業をしないので、Y社に譲渡したが、「ウイスキー」
については、登録商標『Lion』を使用して
事業をするということかもしれません。
商標権の一部の譲渡を考える場合には、
自社の将来の事業計画を、よく検討
して判断すべきです。