知的財産権講座第46回:著作権
知財検定2級実技試験の問題より知財戦略の実務に近い出題です。
私が実際に仕事で出くわすような話ですね。
最新の知財検定2級実技試験(2015年7月12日実施)より、
著作権の問題です。
コンテンツの利用方法について,X社の法務部の部員が
発言1~3をしている。
発言1について,適切と考えられるか?
その理由は?
発言1 「コンテンツAは,甲が歌手乙のために作詞作曲した
J-POPソングで、最近若者の間で流行しています。
大学の学園祭で,乙をゲストに招き、このJ-POPソングを
歌ってもらうことを予定しています。
観客は無料でステージを鑑賞できますが、
乙には出演料を支払う予定ですので、乙がコンテンツAを
勝手に歌うことは問題ですね。」
●正解は、○ 適切です。
●理由は、
「著作権の侵害であるが、著作隣接権の侵害ではない。」
実は、出題では、理由については、選択肢の中から
選ぶ形式になっています。
わかりにくいので、解説します。
歌手乙が、コンテンツAを「勝手に」歌うことは、
コンテンツAを作詞作曲した甲の著作権を
侵害することになります。
乙がコンテンツAを甲の許諾を得ないで
歌うことは、問題です。
この点については、疑問の余地は無いと思います。
●個人的には、この出題は、実際の現場に
当てはめようとすると無理があります。
あくまで試験問題ですから、よいのでしょう。
歌手乙が、音楽事務所所属でも個人事務所所属でも、
コンテンツAを歌うことは、作詞作曲した甲との間で、
許諾を得ている(契約を結んで)のが普通です。
歌手乙が、コンテンツAを「勝手に」歌うこと
は、現実にはあり得ないと思います。
●さて、理由の後半の「著作隣接権の侵害ではない。」
について解説します。
「著作隣接権」とは、歌手、俳優、舞踏家などの実演家
に認められた権利です。
著作物は、利用されなければ、意味がありません。
著作権法の目的である「文化の発展」のためにも
著作物の利用は必要です。
したがって、
実演家には、著作隣接権が認められます。
実演家に認められる「著作隣接権」は、
氏名表示権、同一性保持権などです。
歌手が、CDジャケットに氏名を表示させる権利
(氏名表示権)や、他人が勝手に歌の一部を
カットしたりできない(同一性保持権)など
の権利です。
「著作隣接権」は、この出題の乙がコンテンツAを
勝手に歌うこととは関係がありません。