知的財産権講座第30回:著作権の利用

知財検定2級実技試験の問題より著作権の出題です。
甲は、コンテンツA~Cの利用方法について発言1~3をしている。
発言1~3について、適切と考えられるか。
発言2 「このコンテンツBは、漢字1000字を過去5年間、全国の高校入試で出題された
問題を取捨選択して重要と思われる順に並べられた問題集です。私が経営する
塾で使用したいと思います。本屋で購入することもできますが、生徒の負担に
なるので、1冊購入して、生徒の数だけ丸ごと1冊コピーして配布しようと思い
ます。この場合、この問題集を作った者の許諾なく問題集をコピーすること
ができます。」
正解は、×
理由を一言でいえば、著作物であり、著作権を侵害する場合にあたるため
この問題のポイントは、
問題集を購入して生徒の数だけ丸ごと1冊コピーして配布することが
著作権を侵害するか?
です。
本のコピーというと軽く考えて問題無い、著作権の侵害ではないと考えがちでは
ないでしょうか?
確かに本のコピーが認められる場合があります。
まず著作権法で規定されている「私的使用のため」の場合は複製ができます
(著作権法30条1項柱書き)。
著作物は世の中に広く利用されてこそ文化の発展に寄与しますから、
著作権者の許諾を得る必要が無いという例外を設けています。
しかし塾での使用は、「私的使用のため」とは言えません。
さて、さらにここで注意すべき規定が著作権法にはあります。
学校その他の教育機関における複製を必要と認められる限度に限り著作権者
の許諾なく複製することができます(著作権法35条1項)。
この場合に営利目的の塾や予備校は除かれています。
いずれにしても本問の塾でのコピーは認められません。
では学校の授業でなら問題集を購入して生徒の数だけ丸ごと1冊コピーして
配布することは問題ないのか?
例えば、授業で利用する範囲を超えたコピーや生徒数を超えたコピーや
宿題用としての市販教材のコピーは認められません。
判断の基準としては、著作権者の利益を不当に害する利用形態は許されない
ということです。
著作権の侵害は、現在の著作権法では第三者から訴訟を提起できませんので、
なかなか訴訟に発展する場合は少ないと思います。
しかし、この場合は著作権法に違反するのか?
ということを考えることは必要です。
知らなかったでは済まされない場合もあるからです。